取付け機器の精度

 メカニカルシールを取り付ける機器の精度は、メカニカルシールの性能のうち、特に漏れ量に大きく影響するため、メカニカルシール通則 JIS B 2405:2003 には、機器精度の測定方法などについて規定されている。しかし、精度は漏れ量と同じように、取付機器の用途などに応じて個別規格として当事者間で協定する性質のものであることから、具体的な値は示されていません。
 ここではメカニカルシール通則 JIS B 2405:2003 で規定されている項目と、それらの実績例として、一般的な工業用ポンプに適用されている値を紹介します。

(1) 軸の振れ ( 円周振れ)

停止中におけるスタフィングボックスを基準とした軸の振れ(円周振れ)は、図1に示すように、グランド面に固定し たダイヤルゲージを端面にできるだけ近い軸の部分に当てて測定します。振れの値は、軸を 1 回転させた時のダイヤルゲー ジの読みの、最大と最小との差で表します。
◆工業用ポンプの実績例では √d1/120mm 以下で、最大を 0.1mm としている。

(2) 直角度

停止中における軸とグランド面との直角度は、図 2 に示すように、軸に固定したダイヤルゲージをグランド面のできる だけ内径に近い面に当てて測定します。直角度の値は、軸を 1 回転させた時のダイヤルゲージの読みの、最大と最小との 差で表します。
◆工業用ポンプの実績例では √d1/150mm 以下で、最大を 0.07mm としている。

(3) 同心度

停止中における軸とスタフィングボックス内径との同心度は、図 3 に示すように軸に固定したダイヤルゲージをスタフィ ングボックス内径に当てて測定します。この時、ダイヤルゲージがメカニカルシールカバーとの嵌合部に当たるように、 できるだけ端面に近い部分とします。また、同心加工されたものであれば外径の嵌合部でもよいです。同心度の値は、軸 を 1 回転させた時のダイヤルゲージの読みの最大と最少との差で表します。
◆工業用ポンプの実績例では、0.002×d1mm 以下としている。

(4) 軸方向の動き(エンドプレイ)

停止中における軸受すき間などによる軸方向の動きは、図 4 に示すように軸に固定したダイヤルゲージをグランド面に 当てて測定します。軸方法の動きの値は、軸を動かした時のダイヤルゲージの読みの最大と最小との差で表します。 ◆工業用ポンプの実績例では、軸受すき間のみによる軸の動きを 0.2mm 以下としており、通常の連続運転中では一方向に 寄ったままになるため、動きはないものとしています。起動時のような過渡状態における急激な動きも、同様に 0.2mm 以 下としています。また、運動中の熱などによる緩慢な軸の相対伸びは実測ができないため、軸受すき間による動きとの合 計値を 1mm 以下としている。

(5) 寸法許容差と表面粗さ

メカニカルシールを取り付ける機器では、図 5 に示すようにメカニカルシールカバーのメイティングリング装着部 C、 軸のシールリング装着部 d1 などの部分では、寸法許容差と表面粗さが重要です。 ◆工業用ポンプの実績例では、メイティングリング装着部 C の嵌合は H7 級以上、シールリング装着部 d1 の嵌合は h7 級以 上の精度としている。また、それらの嵌合部分の表面粗さ P・Q・R は表 1 に示すような値としているが、二次シールの材 質によって異なっている。

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